最高裁判所第二小法廷 昭和31年(オ)524号 判決 1960年6月17日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人村田光雄の上告理由(二)、(三)点について。
原審認定の事実関係によれば、被上告人の本訴離婚請求は、民法七七〇条一項五号にいわゆる「婚姻を継続し難い重大な事由がある」場合に該当するものとして理由があるとした原審の判断は、正当として是認し得る。所論は、原審の専権に属する事実認定を争い、これを前提とするか、または、右と異なる見解に立ち、原判決を非難するものであつて(なお、論旨中違憲をいう点は、その実質は単に民法七七〇条一項五号の解釈適用を争うにとどまる)、採用し得ない。
同(四)点について。
醜業に従事することを是認し得ないことは、もとより当然であるが、しかし、原審の認定によれば、被上告人が特殊飲食店で働いたのは、上告人の処遇に堪えかね上告人の許を逃げ出してから二年余を経過した後のことであり、その間、被上告人からの離婚の調停申立に基き被上告人と上告人とを離婚する旨の審判までなされ(もつとも、右審判は上告人の異議申立により失効しているけれども)、当時両者の間には、事実上既に久しく婚姻の実質が失われていたことが明白であり、右の事実とその他原審認定の一切の事実関係を綜合考察すれば、所論被上告人の行為も上告人に対する重大な侮辱であるとは解し難い。所論は、被上告人の所論行為をもつて上告人に対する重大な侮辱であるとの前提に立ち、原判決を非難するものであつて、採用し得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)